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zoom RSS サッチャー首相の功罪 教育改革と新自由主義

<<   作成日時 : 2013/04/20 01:25   >>

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4月8日、マーガレット・サッチャー元首相が亡くなりました。87歳でした。
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イギリス初の女性首相であると同時に、「Iron Lady 鉄の女」と呼ばれたほどの強力な指導力でイギリスの没落を食い止めた偉大な政治家、第二次大戦後のイギリスを代表する政治家でした。

御冥福をお祈りします。


17日、準国葬の扱いでロンドンのセント・ポール寺院で葬儀が行われ、エリザベス2世女王も参列されました。
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一方で、サッチャーに目の敵にされた左派陣営はサッチャーの死を「祝福」。ミュージカル『オズの魔法使い』の挿入歌「悪い魔女は死んだ」をBBCラジオに大量リクエストし、葬儀に合わせて放送させることに成功しました。

「Rest In Peace 安らかに眠れ」をもじった、「Rust In Peace 安らかに錆びろ」の落書き。
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葬列に向かってWaste of Money カネの無駄!と連呼する集団。

こういう輩はどこの国にもいます。悲しいことですが。

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サッチャーが登場した1970年代末のイギリスは、「ヨーロッパの病人」、「イギリス病」といわれるほど衰退していました。第二次大戦には米国の支援でかろうじて勝利したものの、インド・東南アジアの植民地を失い、スエズ戦争も無様な結果に終わって中東からも撤退を余儀なくされました。

製造業は1960年代以降、日・西独との競争に敗れて衰退、1973年の石油危機で悪性インフレに襲われ、旧植民地からの移民の流入で白人労働者は職を失います。このような状態が20年も続きました。

この結果、大英帝国の威信を保とうとした保守党は衰退し、左派の労働党政権が続きます。重要産業の国有化、教育・年金・保険制度の充実(ゆりかごから墓場まで)で労働者の歓心を買おうとした結果、潰れる心配のない国営企業は赤字を垂れ流し、ゴネ得となった労働者は勤労意欲を失い、組合はストを繰り返します。

イギリスの衰退に乗じて中国は香港返還を要求し、アルゼンチンはフォークランド(マルビナス)諸島の領有権を主張しはじめます。

教員組合は「教育の中立性」を口実に教科書採択権を握り、個人の権利、労働運動史、植民地解放史ばかりを教え、帝国主義と人種差別、キリスト教、階級制度、王室を糾弾する教科書を採用しました。

まるでどこかの国みたいですが、かつてのイギリスの話です。

「サー」という貴族の称号を持つ保守党の有力政治家たちとは違い、町の雑貨商という「下層民」出身のマーガレット・サッチャーは、大学で化学とフリードリヒ・ハイエクの経済学を学びました。ハイエクは、『隷従への道』でファシズムと共産主義を「全体主義」として同列に扱い、国家による経済統制に断固反対したオーストリア出身の経済学者です。新自由主義の元祖の一人ですね。

下院議員、教育科学大臣を経て首相に当選したサッチャーは、1979年から90年までの長期政権を率い、サッチャリズムと呼ばれる大改革に着手しました。

・国営企業(電話・ガス・水道など)の民営化。
 ⇒赤字垂れ流し企業の経営再建。リストラで失業者が増大。
・法人税の減税と消費税(付加価値税)の増税。
 ⇒企業の競争力を回復。消費増税は貧困層の負担を増大。
・社会保障費の抑制と軍事費の増大。

フォークランド紛争(1882)は、アルゼンチン軍による奇襲攻撃で始まりました。緊急閣議を開いたサッチャー首相は、派兵をためらう閣僚たちを説得して空母艦隊の派遣を決定します。

「人命に代えてでもわが領土を守るのです。国際法が力の行使に打ち勝たなければならないからです」

「この内閣に、男は一人だけね」

国際法を保障するものも、結局は軍事力であることを、彼女はよく理解していたのです。260人の戦死者をだしながらイギリス軍は勝利し、内閣支持率は70%を超えました。

80年代は冷戦の最終段階で、ソ連のアフガン侵攻に対抗するため、米国のレーガン政権が大規模な軍拡に乗り出していました。サッチャーはレーガンと歩調を合わせ、冷戦を勝利に導きます。ソ連最後の指導者となったゴルバチョフも、サッチャーの指導力を高く評価していました。
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教育改革では教育法を改正し(1988)、国定カリキュラムを策定します。日本でいえば、学習指導要領のようなものです。イギリスの通史をしっかり教え、植民地支配についてはプラスの側面も教えるよう指導しました。キリスト教教育も復活しました。

教育水準局が各学校の授業内容を監督し、全国共通学力試験の結果を公開して、目標に達しなかった学校は教師を入れ替え、廃校にもできるようにしました。保護者も公立学校を選択できるようにし、学校間に競争原理を取り入れました。

教師は自分のクビがかかってきますので、イデオロギー教育をやっている場合ではなくなり、基礎学力の向上を目指すようになりました。

領土・領海、国家主権を断固として守る。外国の武力による恫喝に屈しない。国家が教育内容に責任を負う。これらは、サッチャー政権の最大の功績です。

その反面、経済における徹底的な規制緩和の結果、貧富の格差が増大し、外国資本による企業買収が加速しました。イギリスの自動車メーカーのうち、ロールスロイス社はドイツのBMW社に、ジャガー社とローバー社はインドのタタ自動車、ロータス社はマレーシアのプロトン社に買収され、子会社として存続しています。

イギリスの名門企業が旧植民地の企業に買収されたことは、イギリス人に衝撃を与えましたが、倒産を回避して雇用を維持するにはこうするしかなかったのです。サンヨー電機が中国のハイアール社に買収され、シャープ社が韓国のサムスン電機に「救済」された日本にとって、他人事ではありません。

”買われる”先進国 2012年5月24日(NHK)

イギリスの企業番付(2010)
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もはや上位に残っているのは金融・保険業ばかり。このほとんどが多国籍企業です。

政治・教育においては国益を守ったサッチャーですが、経済においては国益を捨て、多国籍企業ーーグローバリストに国を明け渡したというべきでしょう。彼女は社会主義者という悪魔と戦うために、新自由主義者というもう一つの悪魔と契約を結んでいたからです。

サッチャリズムを模範とする日本の政治家は3人います。

中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三です。

いずれも自民党「タカ派」の政治家で、日米同盟を強化し、「強い日本」を目指す一方、経済の自由化、グローバル化を進めました。

中曽根はレーガン大統領との親密な関係(ロン・ヤス関係)を築いて日米同盟を不動のものとしました。一方で、国鉄(いまのJR)を民営化し、アメリカの対日輸出を有利にする円高ドル安政策をとり(プラザ合意)、円高不況を招きました。

小泉はブッシュ(子)政権との親密な関係を築き、中国からの内政干渉(靖国参拝批判)を排しました。一方で、日本経済の「聖域なき構造改革」を掲げて郵政事業を民営化し、公共事業を削減。デフレ不況を長期化させました。

「日本を立て直す」と公約した安倍首相は、どこへ向かうのか。

教育改革における方向性は明確です。
全国共通学力テストを復活。
 ⇒日教組に支えられた民主党政権が中断していたもの。
教育委員会を任命制に
 ⇒いまの無責任体制を改め、市町村長が責任を負う。
・教科書検定の「周辺諸国条項」を撤廃
 ⇒教育行政への中国・韓国の干渉を排除。
・道徳教育の強化。『心のノート』を復活。
 ⇒民主党政権は『心のノート』配布をやめ、『体のノート』を配布。


その一方で、関税ゼロ、金融・保険・医療分野での非関税障壁の完全撤廃を掲げるTPP交渉に参加を表明するなど、かつての中曽根・小泉「従米」路線の継承ともとれる動きもあり、警戒すべきだという意見もあります。

しかし、すべての敵と同時に戦うのは無理。

まずは当面の敵である民主党の残存勢力を絶滅させるのが優先。新自由主義者の橋下徹(日本維新の会)や、渡辺善美(みんなの党)とも教育改革、憲法改正では手を組めます。

レーニンの二段階連続革命論に習えば、第一革命で社会主義者を倒し、第二革命で新自由主義者に勝利する。


いまはまだ、第一革命の道半ばだ。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
力のある政治家だと思います。フォークランドのときの気概はすごいものでした。アルゼンチンの大型巡洋艦「ヘネラル・ベルグラノ」を沈めたとき、マスコミからバッシングを受けましたが、堂々たる態度で「同じシチュエーションになったらまた同じようにやってやる」と何度も言い放った映像を覚えています。イギリス史にその名を永遠に刻まれる偉大な愛国政治家でしょう。
ただ、私は彼女の経済政策を支持することはできませんね。これは生き方・価値観に関わるところでしょう。政府の果たすべき経済的役割というのは、人それぞれ捉え方に大きな違いがあって当然です。そこをどう擦り合わせて1つのバランスある方向に持っていくか――政治家としての力量を試されるところです。
安倍政権がTPPでどういう態度を取るかについては重大な関心を持っています。個人的には未だに参加断固反対です。関税自主権を放棄すること、国民皆保険制度をいじられること、ISD条項を飲まされることなど、日本人の私としてはとても耐えられませんね。ただ、中国の圧力に対抗せざるを得ない現状からすれば、最終的には加盟せざるを得ないのでしょう。どこまで国益を守れるか。安倍さん・麻生さん・甘利さんらには頑張ってもらわねばなりません。
昔の教え子です
2013/04/20 21:50
カネもコネもない雑貨商の娘に生まれ、努力と才能だけで頂点を極めた女性ですから、無制限の自由競争を是とする新自由主義との親和性が高かったのでしょう。この点、「維新」の橋下徹とよく似ています。

まさに、生き方の問題ですね。
管理人
2013/04/21 00:57

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