トルコ・ウイグル・日本 自由の翼
黒海と地中海をつなぐボスフォラス海峡。
上が黒海、下が地中海につながるマルマラ海。赤線が地下鉄、点線が海底トンネル。
海面が現在より数十メートル低かった氷河期、この海峡は存在せず、黒海は淡水湖でした。氷河が溶けて海面上昇が起こった結果、地中海の海水が黒海へどっとあふれ、両者はボスフォラス海峡で結ばれたのです(黒海洪水説)。
濃い青の部分が淡水湖だった時代の黒海。
このときの洪水の記憶が、シュメール人のギルガメシュ叙事詩や、『旧約聖書』の「ノアの洪水」になったという説があります。方舟が流れ着いたと伝えられるのが、黒海東南のアララト山(アルメニア共和国)です。
オスマン帝国の首都だったイスタンブルはボスフォラス海峡を挟んでヨーロッパ側(旧市街)とアジア側(新市街)とに分かれています。両者をつなぐのは船です。ここで売ってるサバサンド(サバの塩焼きのサンドイッチ)がめちゃうまい。
海峡に、橋は2本かかっています。
第1ボスフォラス大橋
…1973年、トルコ共和国建国50周年の記念事業。
第2ボスフォラス大橋
…1988年、日本のODA(政府開発援助)で開通。
正名称は「征服者スルタン・メフメト大橋」。
いずれも自動車専用ですが、市街地から遠いので市内の通勤には不便。
海峡の地下に地下鉄を通そうというプランは19世紀のオスマン帝国時代からありましたが、技術がありませんでした。
今回、日本企業(大成建設)が受注して、これが実現しました。
トルコ共和国建国90周年に合わせた開通式には、エルドアン首相からの招待を受けて、安倍首相が出席しました。安倍首相のトルコ訪問は今年2度目です。
開通式で、イスラム式の祈りをした安倍首相がトルコで話題に。
エルドアン首相の前に座っているのがギュル大統領、安倍首相の手前にいるのはソマリアの大統領。
トルコとの関係は、オリンピック招致合戦のときの猪瀬都知事のイスラム侮蔑発言でぎくしゃくしましたが、安倍首相の2度の訪問で完全に修復されました。
今回、トルコ政府は日本の三菱重工の原発を受注してくれました。国内での新規の原発建設がストップしている今、日本の原発技術を維持するためにも、原発の輸出は必要です。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「トルコと日本はアジア発展の二つの翼です」(安倍首相)
実は両国は「アジアの某国を包囲する二つの翼」にもなります。
「一種の集団殺害」トルコ首相、ウイグル暴動で批判
【カイロ=加藤賢治】トルコのエルドアン首相は10日、多数の死傷者が出た中国新疆ウイグル自治区での暴動について、「一種のジェノサイド(集団殺害)だ」と述べ、中国政府を「事態を傍観している」と批判した。
トルコの首都アンカラで記者団に語った。
ウイグル族はトルコ系民族で、トルコ国内では、中国政府への抗議デモが相次いでいる。AFP通信によると、トルコの最大都市イスタンブールでは10日、約5000人がデモに参加した。
(2009年7月11日 読売新聞)
エルドアン首相は昨年(2012年)4月、トルコ首相として27年ぶりに最初の訪中し、経済協力協定を結びました。その際、北京でも上海でもなく、ウルムチから入国したのです。
ウルムチは、トルコ系ウイグル人が2009年に大規模な民族紛争が起こった新疆ウイグル自治区の中心都市。ウイグル語はトルコ語の方言にすぎず、トルコ共和国にはウイグル人亡命者が大勢います。エルドアン首相のウルムチ訪問は、中国政府に対する無言の圧力です。
同じ2012年4月には、東京で日本・ウイグル国会議員連盟が発足。安倍晋三氏が顧問に就任しました。
安倍さんの右が日本ウイグル協会代表のイリハム・マハムディさん。
顧問:安倍晋三 → 9ヵ月後に第2次安倍内閣を組閣
会長:古屋圭司 → 第2次安倍内閣の国家公安委員長
幹事長:衛藤晟一 → 第2次安倍内閣の総理補佐官
5月には世界ウイグル会議が東京で開催されました。
ラビア・カーディル議長
中国外務省が猛抗議
10月28日、北京の天安門前で起こった自動車炎上事件では、現場の写真さえ公開されず、まともな現場検証もないまま、中国政府は「ウイグル人テロ組織の犯行」と断定し、ウイグル人をどんどん拘束しています。
再び暴力によるウイグル弾圧を画策している中国共産党にとって、ウイグル問題でトルコと日本が連携することは悪夢です。
安倍首相が2度もトルコを訪問した目的は、地下鉄開通や原発売り込みだけではないのです。
かつて日本帝国陸軍には、満州、内モンゴル、新疆(東トルキスタン)、チベットの独立運動を支援して、ソ連共産主義の拡大を阻止しようという「防共回廊」計画がありました。満州・内モンゴルまではうまくいきましたが新疆、チベットまでは手が届かず、日本の敗戦によってこれらの諸民族の独立運動は中国共産党によって圧殺されました。
安倍首相は、この「防共回廊」の遺伝子を受け継いでいるようです。
(おまけ)
首相の外遊 国会から逃げてないか
安倍晋三首相の外国訪問が異例の多さだ。
積極外交もいいが、重要法案を審議中の国会を欠席することには問題がある。
目的と意義を明らかにして、国会審議にも十分配慮した節度ある日程を組むことが大事だ。…
先週、首相はトルコを訪問した。日本が支援したボスポラス海峡を海底でつなぐ地下鉄の開通式に出席し、エルドアン首相との会談でトルコへの原発輸出推進を鮮明にした。 …
首相はトルコへの出発前に「戦略的に極めて重要な国だ。首脳間の信頼関係を強固にしたい」と目的を語った。国会を差し置いてまで訪問する理由としては説得力に欠ける。 …
気になるのは首相の突出した意欲だ。今国会の所信表明演説では「地球儀を俯瞰(ふかん)する視点で23カ国を訪問し、延べ110回以上の首脳会談を行った」と胸を張った。
その割には最大の焦点である中国、韓国との関係改善は進んでいない。ことさら成果を強調するのは、外遊を国会欠席の口実とする意図があるのかと疑いたくなる。…
外遊と国会のどちらを優先するかは、その都度国会が主体的に判断すべき問題だ。与党であっても首相の意向に従うだけでは、国会が自らの手足を縛る結果につながる。
与野党が知恵を出し合って実効性ある改革を実現してほしい。
(11月4日 北海道新聞社説)
要は中・韓とだけ仲良くしろ、外遊より国会を重視しろと。
安倍首相GJ。北海道新聞はゴミ。
と思ったと思う方は、
(お手数ですが)下の「気持ち玉」をクリックしたあとで、こちらも
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上が黒海、下が地中海につながるマルマラ海。赤線が地下鉄、点線が海底トンネル。
海面が現在より数十メートル低かった氷河期、この海峡は存在せず、黒海は淡水湖でした。氷河が溶けて海面上昇が起こった結果、地中海の海水が黒海へどっとあふれ、両者はボスフォラス海峡で結ばれたのです(黒海洪水説)。
濃い青の部分が淡水湖だった時代の黒海。
このときの洪水の記憶が、シュメール人のギルガメシュ叙事詩や、『旧約聖書』の「ノアの洪水」になったという説があります。方舟が流れ着いたと伝えられるのが、黒海東南のアララト山(アルメニア共和国)です。
オスマン帝国の首都だったイスタンブルはボスフォラス海峡を挟んでヨーロッパ側(旧市街)とアジア側(新市街)とに分かれています。両者をつなぐのは船です。ここで売ってるサバサンド(サバの塩焼きのサンドイッチ)がめちゃうまい。
海峡に、橋は2本かかっています。
第1ボスフォラス大橋
…1973年、トルコ共和国建国50周年の記念事業。
第2ボスフォラス大橋
…1988年、日本のODA(政府開発援助)で開通。
正名称は「征服者スルタン・メフメト大橋」。
いずれも自動車専用ですが、市街地から遠いので市内の通勤には不便。
海峡の地下に地下鉄を通そうというプランは19世紀のオスマン帝国時代からありましたが、技術がありませんでした。
今回、日本企業(大成建設)が受注して、これが実現しました。
トルコ共和国建国90周年に合わせた開通式には、エルドアン首相からの招待を受けて、安倍首相が出席しました。安倍首相のトルコ訪問は今年2度目です。
開通式で、イスラム式の祈りをした安倍首相がトルコで話題に。
エルドアン首相の前に座っているのがギュル大統領、安倍首相の手前にいるのはソマリアの大統領。
トルコとの関係は、オリンピック招致合戦のときの猪瀬都知事のイスラム侮蔑発言でぎくしゃくしましたが、安倍首相の2度の訪問で完全に修復されました。
今回、トルコ政府は日本の三菱重工の原発を受注してくれました。国内での新規の原発建設がストップしている今、日本の原発技術を維持するためにも、原発の輸出は必要です。
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「トルコと日本はアジア発展の二つの翼です」(安倍首相)
実は両国は「アジアの某国を包囲する二つの翼」にもなります。
「一種の集団殺害」トルコ首相、ウイグル暴動で批判
【カイロ=加藤賢治】トルコのエルドアン首相は10日、多数の死傷者が出た中国新疆ウイグル自治区での暴動について、「一種のジェノサイド(集団殺害)だ」と述べ、中国政府を「事態を傍観している」と批判した。
トルコの首都アンカラで記者団に語った。
ウイグル族はトルコ系民族で、トルコ国内では、中国政府への抗議デモが相次いでいる。AFP通信によると、トルコの最大都市イスタンブールでは10日、約5000人がデモに参加した。
(2009年7月11日 読売新聞)
エルドアン首相は昨年(2012年)4月、トルコ首相として27年ぶりに最初の訪中し、経済協力協定を結びました。その際、北京でも上海でもなく、ウルムチから入国したのです。
ウルムチは、トルコ系ウイグル人が2009年に大規模な民族紛争が起こった新疆ウイグル自治区の中心都市。ウイグル語はトルコ語の方言にすぎず、トルコ共和国にはウイグル人亡命者が大勢います。エルドアン首相のウルムチ訪問は、中国政府に対する無言の圧力です。
同じ2012年4月には、東京で日本・ウイグル国会議員連盟が発足。安倍晋三氏が顧問に就任しました。
安倍さんの右が日本ウイグル協会代表のイリハム・マハムディさん。
顧問:安倍晋三 → 9ヵ月後に第2次安倍内閣を組閣
会長:古屋圭司 → 第2次安倍内閣の国家公安委員長
幹事長:衛藤晟一 → 第2次安倍内閣の総理補佐官
5月には世界ウイグル会議が東京で開催されました。
ラビア・カーディル議長
中国外務省が猛抗議
10月28日、北京の天安門前で起こった自動車炎上事件では、現場の写真さえ公開されず、まともな現場検証もないまま、中国政府は「ウイグル人テロ組織の犯行」と断定し、ウイグル人をどんどん拘束しています。
再び暴力によるウイグル弾圧を画策している中国共産党にとって、ウイグル問題でトルコと日本が連携することは悪夢です。
安倍首相が2度もトルコを訪問した目的は、地下鉄開通や原発売り込みだけではないのです。
かつて日本帝国陸軍には、満州、内モンゴル、新疆(東トルキスタン)、チベットの独立運動を支援して、ソ連共産主義の拡大を阻止しようという「防共回廊」計画がありました。満州・内モンゴルまではうまくいきましたが新疆、チベットまでは手が届かず、日本の敗戦によってこれらの諸民族の独立運動は中国共産党によって圧殺されました。
安倍首相は、この「防共回廊」の遺伝子を受け継いでいるようです。
(おまけ)
首相の外遊 国会から逃げてないか
安倍晋三首相の外国訪問が異例の多さだ。
積極外交もいいが、重要法案を審議中の国会を欠席することには問題がある。
目的と意義を明らかにして、国会審議にも十分配慮した節度ある日程を組むことが大事だ。…
先週、首相はトルコを訪問した。日本が支援したボスポラス海峡を海底でつなぐ地下鉄の開通式に出席し、エルドアン首相との会談でトルコへの原発輸出推進を鮮明にした。 …
首相はトルコへの出発前に「戦略的に極めて重要な国だ。首脳間の信頼関係を強固にしたい」と目的を語った。国会を差し置いてまで訪問する理由としては説得力に欠ける。 …
気になるのは首相の突出した意欲だ。今国会の所信表明演説では「地球儀を俯瞰(ふかん)する視点で23カ国を訪問し、延べ110回以上の首脳会談を行った」と胸を張った。
その割には最大の焦点である中国、韓国との関係改善は進んでいない。ことさら成果を強調するのは、外遊を国会欠席の口実とする意図があるのかと疑いたくなる。…
外遊と国会のどちらを優先するかは、その都度国会が主体的に判断すべき問題だ。与党であっても首相の意向に従うだけでは、国会が自らの手足を縛る結果につながる。
与野党が知恵を出し合って実効性ある改革を実現してほしい。
(11月4日 北海道新聞社説)
要は中・韓とだけ仲良くしろ、外遊より国会を重視しろと。
安倍首相GJ。北海道新聞はゴミ。
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この記事へのコメント
公式発表の軍事費は人件費を含まず、人民解放軍は企業や農場経営、貿易などのビジネスもやっているので、国防費以外の収入もあります。そもそも政府が発表しているGDPや人口すら信用できない国です。まして軍事費をや。
兵力では予備役も含めて公式発表で280万。自衛隊(25万)の10倍程度です。人口比からいって、そんなもんでしょう。しかし兵力が多くても、輸送手段と補給がなければ戦えません(隋の高句麗遠征、ナポレオンのロシア遠征の教訓)。
海自の退役将校の方のお話では、現在では海自が潜水艦能力で東シナ海の制海権を握っており、圧勝だそうです。しかし5年後にはわからないと。
また核戦力では日本はゼロですので、中国が核による恫喝をしてきたときが正念場となります。米国の「核の傘」が機能するかどうか、試されるわけです。
管理人様がトルコとウイグル人について実によく御存じなのに感服いたしました。
多くのトルコ人はウイグル弾圧を大変懸念しております。
あと、トルコ陸軍はnato最強と言われるほど勇猛です。
ロシアには負けない、帝国陸軍と双肩すると自負していました。
エルドアン首相は熱い男だからなあ。中国軍は弱いので有名だし、中国ビビッているだろ。
ウイグルとトルコの間のトルコ系諸国――カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギスタンがウイグル支援で連携すれば、ひっくり返りますね。
中共はこれを恐怖し、上海協力機構という枠をはめて人民元をばらまいてコントロールしてきましたが、「カネの切れ目が縁の切れ目」となるでしょう。トルコ人には日本人と同じ「魂」がありますので。
最近、イスタンブル再開発問題で反エルドアンのデモが起こりましたが、あの背景も怪しいですね。
中国の酷いウイグルへの迫害はトルコ系諸国――カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、キルギスタンから口伝えでトルコへ伝わり(旧シルクロードです)、トルコ国民が激怒しております。
エルドアン首相はG20で胡錦濤にウイグルの件を直接怒ったと記憶しています。この件でトルコは中国に対し引かないでしょう。
昔はオスマントルコがウイーン包囲網をした位トルコは強いです。
トルコ人に言わせると欧米植民地にならなかったのは日本、トルコ、タイ程度です。欧米を戦争と工業力で押し返した唯一の国、日本は凄いと。
また、欧州をアジアから追い払い、強大なアメリカ軍と太平洋上で互角の戦いをしたのは日本のみだそうです。
ベトナム戦争?んなもん自国へ攻め込まれ、アメリカが攻め疲れて帰って行っただけ。イラクのサダムフセインもアフガンもアメリカに攻め込まれている。自国の上で敵の陸軍に上陸されて戦うほど被害の酷いものはないと申しておりました。
トルコ人から指摘されて目からうろこが落ちました。