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zoom RSS フィリピン大統領が米国と「決別」

<<   作成日時 : 2016/10/23 17:23   >>

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「私は米国との決別を表明する」

「私は、あなたたち(中国人)のイデオロギー的な流れに自分の身を置き直した。場合によってはロシアへも行ってプーチン大統領と話し合い、世界に立ち向かっているのはわれわれ三者──中国、フィリピン、ロシア──だと彼に伝えるだろう。これしか道はない」
(フィリピンのドゥテルテ大統領
10月21日 訪問先の北京で中国人実業家らを前で講演)
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ベトナムは、フランスの植民地でした。

ホー・チ・ミンに率いられたベトナム独立軍はインドシナ戦争でフランス軍を撃退しました。その後のベトナム戦争では米軍を撃退した結果、いまのベトナムにはフランス軍基地も、米軍基地もありません。

インドネシアはオランダの植民地でした。

スカルノに率いられたインドネシア独立軍は、日本軍の協力も得てオランダ軍を撃退しました。いまのインドネシアにはオランダ軍基地はありませんし、オランダ支配の影はまったくありません。

フィリピンは、スペイン植民地でした。

独立を求めるフィリピン人ゲリラはスペイン軍に追われて逃げ回っており、フィリピンのスペイン軍を撃退したのはアメリカでした(1898 米西戦争)。はじめはアギナルドが率いるフィリピン人ゲリラを支援したアメリカですが、スペインがあっさり負けるとフィリピンを米領にすると決め、フィリピン人ゲリラへの弾圧に転じます。アギナルドは「反逆罪」で逮捕され、配下のゲリラ部隊は米軍によって掃討されました。レイテ島では、ゲリラに協力したとして、住民約10万人が米軍によって虐殺されています。米軍司令官はアーサー・マッカーサー。ダグラスの父親です。

「10歳以上はすべて殺せ」
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マニラに置かれた米国の植民地政庁は、スペイン時代からスペインを納めていた富裕層ーースペイン系および華僑系の人々ーーの土地財産を保証し、彼らを中間管理者としてフィリピン人を統治します。独立後に大統領を出すケソン家、マルコス家、アキノ家も、こうした対米協力者の子孫です。

独立運動が沈静化すると、米国のウィルソン大統領が二院制のフィリピン議会を認め、自治権を与えます。議員なったのはもちろん富裕層です。世界恐慌下でF.ローズヴェルト大統領は、10年後のフィリピン独立を認めました。

10年後の1944年は日米戦争中でフィリピンは日本軍の占領下にありました。日本が独立を認めず軍政を敷いたため、フィリピン人の多くが親米に傾き、ダグラス・マッカーサーの米軍を「解放軍」として迎えました。

日本敗戦の翌年、フィリピンはアメリカから独立します。
アメリカと戦っての独立ではなく、「棚からぼた餅」、与えられた独立でした。

だから独立後もアメリカ系企業と華僑が経済を支配し、土地の分配は行われず、貧富の格差は植民地時代のままです。アメリカ流の大統領制、二大政党制が敷かれますが、大統領も議員も基本的に親米派の富裕層。彼らは地方を治める大地主のボスたちで、選挙では票の買収や脅迫が横行してきました。

米ソ冷戦下で、アメリカは親米政権と軍事同盟を結んで米軍基地を存続させ、土地の分配を求める農民運動を「共産主義者」と呼んで弾圧させました。マルコス長期独裁政権の腐敗が頂点に達した時、これを批判するアキノ家が民衆のアイドルとなりました。マルコスに殺されたアキノ上院議員の妻コラソンが大統領選に立候補して当選。選挙結果を認めないマルコス大統領は、民衆と軍の蜂起でアメリカへ亡命しました(1986)。


今年、2016年に退任したベニグノ・アキノ3世大統領はコラソンの息子。中国海軍の南シナ海進出に対抗し、冷戦終結で撤収していた米軍を呼び戻し、日本の安部政権から巡視船の供与を受けるなど、中国包囲網の一角として積極的に動いてきました。ハーグの国際仲裁裁判所に中国を提訴し、勝訴を勝ち取ったのもアキノ政権でした。

汚職や貧困と戦うと公約したアキノ政権も、歴代政権と同じでした。治安の悪化、官僚や警察の腐敗、麻薬の蔓延といったフィリピンの病巣にはほとんど手をつけなかったのです。これらの問題は南部のミンダナオ島で特にひどく、共産ゲリラや、イスラムゲリラが跋扈する状態が続いてきました。

レイテ島出身のロドリゴ・ドゥテルテは、父方の祖父が「呂」姓の華僑。米軍によるレイテ虐殺については、幼少時から聞かされてきたのでしょう。フィリピン共産党の創設者シソンを師と仰ぎ、ミンダナオ島の検事を務めた後、「麻薬撲滅」を公約してダバオ市長に選ばれます。

ドゥテルテ市長は、マフィアとズブズブの警察機構を信用せず、住民に自警団を組織させ、彼らに麻薬密売人や常習者の「処刑を許可」し、報奨金を与えるという超法規的手段を取りました。この結果、ダバオの治安は劇的に改善します。

この「戦果」を看板にして2016年の大統領選挙に出馬したドゥテルテは、マニラ首都圏とミンダナオ島で高い支持を受け、圧勝しました。

これまでに3000人以上の密売人を超法規的に「処刑」して治安を回復したドゥテルテ大統領の手法は国民から圧倒的な支持を受ける一方、旧宗主国アメリカや欧州諸国、国際機関からは「人権抑圧」として糾弾されてきました。一方、人権抑圧が当たり前の中国やロシアは、ドゥテルテを評価しています。

このような背景があって、一連の「暴言」が出てきたのです。

(治安回復について)
「裁判など必要ない。治安を乱す犯罪者は全員、マニラ湾の魚の餌にしてやる」
「汚職警官も同様に処刑する。ただし、下級警官の給与を月額315ドルから2000ドルに引き上げ、ワイロなしで生活できるようにする」

(オバマ大統領から批判されたことに対して)
「クソッタレ!(原文は「売春婦の息子め!」)」
「アメリカでは無抵抗の黒人を射殺している。そんな国から人権について教わることなどない」
「フィリピンは属国じゃない。貴様は何様だ?」

(「フィリピンのドナルド・トランプ」と呼ばれたことに対して)
「トランプは偏見のかたまりだ。一緒にするな」

(国連からの非難に対し)
「国連がそんな無礼な態度をとるなら我々は脱退する。お前らは愚かだ。お前らが正しいのなら世界中の戦争はとっくに無くなっている。」

中国に関しては、
「中国の難癖に耳を貸す必要はない。私が奴らの島に直接出向いてフィリピンの国旗を立ててやる」

と啖呵(たんか)を切ったものの、すぐに方向転換し、訪中して冒頭紹介した発言が飛び出しました。

すでに、アキノ前政権が結んだ米国との軍事協定を破棄し、フィリピンからの米軍の撤収を求めるとも公言しています。

ドゥテルテ氏がフィリピン民族主義者(ナショナリスト)であり、激しい反米感情を抱いていることは間違いありません。アメリカは、中国の工作活動(工作資金)がドゥテルテ氏周辺に及んでいると見ているようですが、この点はまだ確証がありません。もちろん、米比関係の悪化が中国の南シナ海進出問題をうやむやにし、中国を利するのは当然ですが…

ドゥテルテ氏が中国の傀儡(かいらい)になったのかどうかを確かめる試金石は、対日関係でしょう。
「日本軍国主義の復活を認めない」
「日本との関係を見直す」
などとドゥテルテ氏が言い出したら、「ははぁ、中国に買われたな」と判断できます。

ドゥテルテ氏は日本について、これまで否定的な発言は一切していません。

バギオには戦前、2万人の日本人が移住し、紙幣の原料となるマニラ麻の栽培を住民に教え、いまも日系人のコミィニティがあります。この日系人の記念碑を、私費で立てたのがバギオ市長だったドゥテルテ氏です。2013年には家族と来日し、姉妹都市の軽井沢で初めてのスキーを楽しんでいます。

10月25日、今度はフィリピン共和国大統領として来日し、天皇陛下、安倍首相と会見します。

「対米従属からの離脱」というドゥテルテ外交は、トルコのエルドアン大統領、インドのモディ首相、サウジのビン・サルマン王子らとも通じ、「対米従属」のふりをしている安倍首相が、心の底で望んでいることだろうと私は想像します。

これら「一匹オオカミ」的指導者に妙にウケのいい安倍首相が、初の首脳会談でドゥテルテ大統領とどういう話をするのか?




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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
いつも勉強になる記事ありがとうございます。

ひとつ質問です。

華僑とは、中国本土を離れて海外に渡った人々を指すと理解していますが、なぜ彼らを中国人と言わず、わざわざ華僑という言葉を使って本土の中国人と区別しているのでしょうか。

母国を離れて海外に住み着くのはどこの国でもありますよね?
なぜ中国人だけ、華僑や華人といった言葉があるのでしょうか。

基本的な質問で恐縮ですが、御回答のほど、よろしくお願いします。
ドラグーン
2016/10/24 00:35
「僑」は仮住まいの意味。現地の国籍を取らず、「在留中国人」としてアイデンティティを保つ人たちを「華僑」といいます。

これに対し「華人」は、現地の国籍を取った「中国系◯◯人」です。レンホーさんはきっと、華僑のままでいたかったんですね。
管理人
2016/10/24 03:24
ありがとうございます。
ドラグーン
2016/10/24 09:10
お久しぶりです。
ドゥテルテ氏はきちんとネクタイを締めて、日本に好意的な発言をしたようです。アメリカにあれだけ噛み付いておいて、側からみればアメリカの手先であるはずの日本に対して友好的なのはなぜなのでしょう?記事にあるように安倍首相の心の内を見抜いているからでしょうか?
バロンドーラー
2016/10/26 19:54
安倍・ドゥテルテ会談では、腹を割った話ができたのでしょう。米軍撤退後は自衛隊をフィリピンに…なんて話になるかも…

習近平はメンツ丸つぶれですw
管理人
2016/10/27 10:01
初めてコメントをさせて頂きます。
10年振りに世界史をやり直している無学の徒です。

本文中に(1998 米西戦争)の記述がありましたが、
前後の文章から推測して誤字かと思います。
実際の年を教えて下さい。
愚者
2016/11/06 20:39
1898年、日清戦争終結の3年後です。ご指摘ありがとうございます。
管理人
2016/11/06 21:45
とんでもないです。
こちらこそ教えていただき
ありがとうございました。
愚者
2016/11/09 20:19

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